日本には五節句と呼ばれる5つの節句があります。
桃の節句や端午の節句のように有名なものもありますがひときわ目立たないのが重陽の節句です。
なんだそれ?とピンとこない方も多いでしょう。
この記事では現在は目立たない重陽の節句について、わかりやすく歴史や由来、この時に食べるものを紹介していきます。
重陽の節句の重陽って?
重陽の節句は五節句の1つなのですが、その中でも一番なじみがないでしょう。
重陽という言葉自体がほとんど聞くことがなくて、なじみがないでしょう。
この重陽というのは元は中国の陰陽説からきています。
陰陽説とは世界のものは陰と陽の2種類に分けることが出来るという思想です。
この陰と陽に分けられたものは数字も入ります。
数字には偶数と奇数がありますね。
この偶数を陰(陰数)、奇数を陽(陽数)と分けました。
陰だから悪い、陽だからいいということではありませんが、陽という文字には縁起がいいという意味合いは含まれました。
陽数のなかでも一番大きな数字が9です。
9月9日で一番大きな陽数が重なることから「重陽」といわれこの日が「重陽の節句」といわれるようになりました。
そしてこの陽数が重なり最も縁起が良いとされる9月9日を、不老長寿や健康、繁栄を願う行事を行うようになったのです。
重陽の節句の由来
重陽の節句は、ほかの五節句と同じように、中国の逸話が日本に入ってきて、日本で新しい形となりました。
これは歴史的に古くから中国と日本は交友関係にあり影響を受けていたからなんだよ。
それでは重陽の節句がどのように出来上がってきたのか、由来を見ていきましょう。
中国で重陽の節句の由来
中国には重陽の節句の前身となる「重陽説」というものがありました。
重陽説は紀元前の時代からあり、邪気を避ける日とされていました。
これが次第に「邪気を避ける日」から、「吉日」という意味合いが強くなっていきます。
これと同時に、中国にはこれにちなんだ物語が存在します。
この疫病がはやった時9月9日にに高い山に登り、茱萸の実(ハシバミの実)を身に着け、山の頂上で菊酒を飲む。
それにより、疫病にかからずに済みました。
そのことからこの日、9月9日には山に登り、菊酒を飲む習慣になったのです。
いろんな話があるんだね。
実際に中国では今もこの日はハイキングなんかを楽しむ人が多いんだよ。
菊酒を飲むのには中国の菊に対する考え方が関係しているんです。
菊という花は秋から冬にかけての時期に咲きます。
寒く霜もお降りる季節に咲くことから、菊は中国では「不老草」とみなされてきました。
漢方薬としても、菊は解熱・毒消し・肝臓や肺、腎臓にもよいとされ、様々な健康に良い効能を持っているとされています。
そのため菊酒は「長命酒」「健康酒」とされてきたのです。
これが菊酒を飲まれるようになったいわれです。
そこには菊酒を飲んで700年生きる菊慈童と、菊慈童から菊酒をもらい不老不死になる文帝の話が描かれているんだよ。
日本の重陽の節句の由来
日本での重陽の節句は、中国での重陽説が平安時代に伝わってきたことから始まります。
はじめは宮中で菊を飾ったり菊酒を飲んで長寿を願ったりという行事として始まりました。
さらには菊を鑑賞し歌を詠んだりと、宮中らしい楽しみ方をしていたのです。
他にも「着せ綿」や「茱萸嚢」といったことも行われていました。
・「着せ綿」とは、夜のうちに菊に綿をかぶせておきます。
すると翌朝には夜露と菊の香りがしみこみますので、その綿で体をふき清めるというものです。
・「茱萸嚢」とは中国でも厄除けにされた茱萸(しゅゆ)の実を袋に入れて身に着けたり飾ることで厄除けにしたものです。
平安の貴族の時代から時が流れ、江戸時代に大衆の文化としても広がりました。
重陽の節句は9月9日。
旧暦のこの日を現在の暦に直すと10月に当たります。
この時期は大衆にとっては大事な「収穫」の時期に重なり、「お九日(おくんち)」と親しまれることになりました。
現在でも佐賀県の「唐津くんち」や、長崎県の「長崎くんち」といった有名な収穫のお祭りとしてもお九日(おくんち)の名残があるんです。
重陽の節句に食べる料理
五節句のときにはそれぞれに食べるものがあります。
このように、端午の節句に柏餅を食べるように、七夕の節句にも食べる食べ物があります。
ここでは重陽の節句に食べるものを紹介します。
菊酒・食用菊
重陽の節句に食べる代表的なものが「菊」です。
菊を食べる?と疑問に思われる方もおられるでしょう。
菊は観賞用とは別に食用のものが栽培されています。
食用菊とひとくくりにされがちなのですが、いくつかの種類が作られており、おひたしや天ぷらで食べられることが多いです。
食べる以外にも、由来にもある「菊酒」にして飲まれもするのです。
味はその時の飲み方次第だけれども、菊の香りを楽しめるんだ。
栗ご飯・秋ナス
重陽の節句の後からついた意味合いは秋の収穫祭。
旧暦の9月9日は今でいう10月半ばあたりなのでちょうど作物とれる時期。
その意味合いのために食べられるのが「栗ご飯」です。
農作物の収穫や豊作を祝う祝い膳として栗ご飯を食べます。
そしてもう一つ。
秋を代表する食べ物が「秋ナス」です!
ナスは夏にもとれる野菜ですが、秋にとれるものは夏のものと比べ種も少なく、実もしまっていておいしいと言われます。
さらに、ナスは9の付く日に食べると「中風をやまぬ」といわれています。
この意味は「おいしいナスを嫁には食べさせない」というイジメ・・・ではありません!
ナスには体を冷やす作用があり、体を冷やすと下痢や不妊につながるともいわれています。
そのためこのことわざは、お嫁さんの体調を気遣ったものという説があります。
これとは別にもう一つある説はヨメ=ネズミというものです。
ヨメは「夜目」を表し、それはネズミのことであるという説もあるのです。
果たしてどちらの説が正しいかは、なんともわかりませんが、お嫁さんの体調を気遣ったものであったならうれしく思います。
重陽の節句のまとめ
重陽の節句は吉日で縁起が良い日とされ、最も重要な節句でした。
この日は菊を飾ったり食したりし、長寿や健康を願う日だったのです。
時期が作物の収穫のときと重なるために、江戸時代には収穫祭と混合されて、節句を行われました。
現在の「くんち」がその名残です。
重陽の節句では菊酒や栗ご飯を楽しみ、長寿を願い豊作を祝います。
五節句の中でも大切な日ですがあまり知られていない現在。
せっかくですから、今年の9月9日(旧暦だと2020年は10月25日)は菊や栗ご飯を楽しんでみてください。